キノ

2003年8月20日
 で、いまは時雨沢恵一(だったっけ?)の「アリソン」を読んでる中。「キノの旅」は、キャラクターやらお話やらはともかく、機械の感じと雰囲気は嫌いではなかった。あとイラストな。で、その作者がまともなストーリー性のあるものを書いているってんでヒマつぶし程度に買ってみた。
 で、結果。
 うーん……。これはおもしろいとは言えないなあ……。
 まだストーリーが回転してないんで断言はできないけど、作者のクセとして、おそらく「淡々と筋を追う」というのがあると思われるんで、よほどストーリーそのものがおもしろいものでないと、この先もあんま期待できない。
 なんせキャラが弱いうえに、その弱いキャラを立たせる努力も弱い。キャラの内面に踏み込まない描写もあいまって、とにかく「薄い」の一言に尽きる。
 ならばせめて、世界観やら設定やらが魅力的でないとなー、とか思うわけなんですが、それもいまひとつ……。最初の序文っぽい感じの前置きの引きが強烈だっただけに、肩すかしを食らった気分。「異様に記憶力がいい」という設定があるんだったら、早い段階でそれを印象づけて有効に活用するエピソードがあってもよかったのに。
 なんかこの小説を読んで、あらためて「小説がおもしろいための条件」みたいなことについて考え込んでしまいました。直前に読んでたのがイリヤだけになおさら。
 前から思ってたんだけど、小説がおもしろくあるためのかなり大きなウェイトは技術が占めている。決定的なものは、やっぱその作品にこめられている熱量で、これさえあればどうにでもなるとは思うんだけど、そういう作品が多くの読者に受け入れられる可能性はけっこう低い。
 技術というのは、実にさまざまなものを包含しているわけなんだけど、特に大きいのは、読者に「世界」に入らせるための段取りのよさではないかと思ったりもする。少なくとも「アリソン」の作者がなによりヘタなのはその点じゃねーかなあ、と。魅力的なパーツを作品のあちこちで、ムダに小出しにしてるという印象。
 文章もなんかこなれてねーんだよなあ。これはおそらく「キャラが立ってない」という印象と無縁ではないんだけど、イリヤを初めとする「おもしろい」と思うに足る作品は、地の文から会話が浮き立って見える。要するに、地の文の説明の助けを受けた「人間たちの物語」であることが自然に飲み込めるような、そんな感じ。それがこの作品では、セリフも、地の文の一部になってしまい、およそメリハリというものが感じられない。てゆうか、語り手である作者のエゴがキャラクターまで支配していて、作品が単一のトーンで塗りつぶされている。
 うまく成功すれば、それがたぶん「キノの旅」が受け入れられた理由のひとつにもなったりするんだろう。
 これも二巻は読めそうにないなあ。

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