春の精液

2004年3月14日
 吐き出しておきます。
 もうこういう妄想はやめたはずだったのですが。
 やっぱ溜まったものは出さないと。

 僕の最初の記憶はとても陰惨な光景だった。母親はなにか犬のような巨大な獣に犯されていた。唾液なのか血液なのか、判別がつかず、とにかくねばねばして生理的嫌悪感を覚えるような液体が母親の肉体を浸しており、その母親の腹部のあたりに赤くて巨大な角のようなものが出入りしている。そのたびに母親は汚らしい歓喜の声をあげ僕は耳をふさぎたくなるがそれを許されておらず、さらに獣がこう宣告した。
 「こうして生まれたのがおまえだ」
 そうか。それで僕は納得した。僕はとてもおぞましいものだ。おぞましいものから生まれ、おぞましい世界を這いずり回る汚らしいものだ。陰惨な世界で陰惨な喜びと悲しみを浴びながら生きる物体だ。
 そう。だから僕は僕の世界を陰惨なもので埋め尽くそうとした。その陰惨な世界のなかでもっとも陰惨なものであろうとした。気がついたときには僕はとても強大なものになっていた。すべてを破壊できる力を備え、実際にすべてを破壊する。泣き叫ぶ子供の耳を引きちぎり、その耳に灼熱した鉄棒を突っ込み、死ぬことすら許さず、四肢を切断し、断面を縫合し自分の意志で動けぬ物体と成り果てたもののうえに糞便をまきちらした。血と腐臭。
 血と腐臭。
 粉々に砕いたレンガのような砂礫がどこまでも続く地平の真ん中に僕は立っている。周囲にはもうなにもない。僕は破壊するものを求めて蠢いた。そして、見つけた。
 僕は、僕の生きてきた時間のなかで、初めて美しいものを見つけた。
 それは少女の姿をしている。色素の薄い肌と、つくりものめいたブロンズ色の髪をもち、やや重たい印象すら与えるくっきりとした二重まぶたの下で、無表情な瞳がうつろな視線をさまよわせている。
 僕はそれを壊そうとした。その華奢な体を地面に叩きつけ、首を締めよだれをたらさせ、尿をもらさせ、ありとあらゆる体液を搾り出し、抜け殻となったその肉体を引き裂き陰茎を差しこみ射精を繰り返そうと思った。それは、近づく僕をぼんやりと眺めた。そして僕に背を向け、どこか遠くを指差した。
 「向こうに」
 こちらを見た。青い瞳がまっすぐに僕を見た。
 「黄昏の国があるよ。連れていって」
 赤茶けた大地の向こうに、オレンジ色の光がぼんやりと滲む。

 黄昏の国には、終わらない夕暮れがある。その国は終末の少し手前で時間を止めていた。僕と少女はその国でなにもせずに存在した。人影のようなものが現れては、海の向こうにある闇に消えていった。僕はなにもせずにそれを眺めていた。少女もまたそれを眺める僕のそばにいて、なにもせずにいた。

 あー、書くの飽きた。
 ということは、書きたいのは「これ」ではなかったらしい。自動筆記の人は半分おかしいらしい。

 あー。少女はいいなあ。僕はちっちゃい女の子をまるで聖なるものであるかのようにたいせつにしたいと思います。聖なるとかゆってもそれはちゃんとした肉体なので、僕は少女の肉体の一部を食べて生きたいと思います。無限に再生するので平気です。少女の尿を飲み、涙をすすり、白磁でできた人形を扱うみたいにたいせつに抱きしめます。そして僕は言葉とかも必要じゃなくて、ただ毎日「あー」とかゆって正体をなくした表情で生きます。生きてるってゆわないか、それ。ただ、空には青空があるといいと思います。地には緑があるといいなと思います。毎日が春でいつも摂氏20度くらいで暑くもなく寒くもなく、ぼんやりと曖昧な空気のなかで、ただ女の子を愛するための言葉を口にしながら、この世界がこのようであったことに感謝したいと思います。やがて人格とかなくして空気のようであったらいいと思います。永遠の春が続くその世界の大気になって女の子の周囲で意味もなくぼんやり存在したいと思います。春だといいなと思います。いつでも春だといいなと思います。悲しいこともさびしいこともないといいなと思います。そんな世界になんの意味もなくても、ただ楽しいことと嬉しいことだけがあって毎日笑っていられるといいと思います。僕は人格ではないので、ただ女の子がそのようであるために存在しているといいと思います。鳥が鳴き、風邪がそよそよと吹き、おいしそうなパンのにおいがして、ただ幸福であるといいと思います。すべて幸福であるのがよいと思います。意味も価値も必要じゃないと思います。

 ……まあ早い話、疲れてるわけですが。
 あー、ひさしぶりに爽快に電波出した。

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